「綺麗な夜だな」 金の瞳を星月夜にきらめかせて、男は呟く。傍らの少女も同じように空を見上げ、まだ少し欠けている月を目に映した。ほんの僅かな沈黙を破り、少女は白い息と共に、かすかな声で呟く。 「あたし、こういう星が煙るような日に産まれたんだって」 「ああ、それでか……名前」 何かに納得して、青年は口元をゆるませた。少女はそんな彼に視線をうつし、灰色の毛皮を直しながら尋ねる。 「ねえ、あたしの名前、なんて意味なの?」 「うん? ああ……精霊時代の古い言葉でな――」 二人の間を……風が、吹き抜けた。 |
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