『 儚 現 - m u g e n -』


薄く色づいた 白い花びらが
舞い上がる 黄金の砂塵の中
騒がしくわめきたてる ビルの間の音
行きかう人々すら まだ夢うつつのまま

仮面を被って 感情を押し殺した
人の波の中に消えた 貴女を追い
狂った歓喜の歌声に満ちている
熟れ過ぎた果実に 手を伸ばした……

凍える焔が 僕の胸で舞い踊り
この手は貴女の背を 抱きしめる
微笑む貴女は 少女のように今
枯れてく散りばな 口付けて紅よ

硝子細工の蝶 狭い檻の中
すぐそばに見える 花にさえ届かない
何度手を 伸ばしてみても
幻のように 花は遠ざかってゆく

仮面を被った あなたの横顔に
僕は一人 酔いしれていた
その手に握られた 銀の繰り糸に
気づきもせず 掌で踊り続けた……

凍える焔が この胸に舞い上がる
触れては逃げていく 少女のような
貴女は口付ける 薄く白む朝露に
朱い星の燃え上がる 真夏の夜が溶けていくよ

迷える焔が この胸に巻き上がる
触れては揺らめく 水面のように
散り交い曇れよ 霞の夜に白い花
甘い風吹き払う 現の夢は泡沫に……



 ルルド=シュパイゼ 著 『Child×Chain』より『儚現-mugen-』
 公歴3002年初版 エンタリアー社




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