空を、やけに青く感じた。

もうずいぶん長いこと、あいつの代わりを演じている。一年か……それ以上か。時間の感覚がひどくあいまいになっている。

俺という精神の異形はもうじき、本物として認識されようとしている。医者の前ではいちおうマトモな答えをしているらしいし、あいつは顔を出さなくなってしまったのだから仕方ないといえばそうだろうが。これだから、医者なんて信用できない。それともあの医者がヤブなんだろう。

ひとつ、重要な問題がある。俺が正常な人格として認識されるということは、あいつが異形の烙印をおされるということだ。この世のことわりとしても、それは絶対にあってはならないことだ。

でも、あいつは未だに見つからない。こんなに長い間、姿を隠すなんておかしすぎる。俺の知らないところで、あいつはいったい何を感じて、何を思っているんだろうか。

光に耐えられない俺は、もはや少しずつ朽ちはじめていた。あと少ししかもたないだろう。もう、限界だ。

知っていたのに。

愛された記憶、虐待された記憶。生まれた記憶、殺した記憶……。

ふかく消えない生傷が、俺をどうやって作り出したかなんて、もうとっくに知っていたはずだったのに。

あいつはどこへ消えた?俺はどこで間違えた?思案するたび、どこかで何かが剥がれ落ちてゆく。そうして闇がかいま見えたそのとき……

そらを、やけにあおく感じた……







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