俺は何者なんだろう。 その答えは、すくなくとも俺の中には存在しない。 俺は、おれのために生きているものではないから。かといって、何かのために生きているわけでもない。やり場のない気持ちだけが、この胸に開いた穴を通り抜けていくのがわかる。 俺は、なにものなんだろう。 いや、知らなくてもいい。「生きて」いるものですらないかもしれない、それを知るのがいやだから。 怖い?そう、俺は恐れているのだろう……自分の正体を知ることを。 あいつと共にあり、あいつの為に存在する、それだけは変わらない事実だ。けれどいつか自分が何者なのか知ってしまったとき、俺はあいつのそばにいられなくなってしまうような、そんな気がする。あいつを守るため、俺はできたから。 憎悪。怒り。嫌悪。哀しみ。苦しみ。虚ろ。戦慄。……血の海。 すべての負の感情をカケたらきっと俺になる。俺はこの存在で、あいつの負の感情をやわらげる。 利己的な共生関係だ。あいつにとってのマイナスはどこにもない。だからこそ、俺がいる。 俺は何モノなんだろう……。 |
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