分かっていた。

俺が、ほんとうは存在してはいけないのだということ。ひとかけらの光も持たない魂が、人間の世界に順応できるはずがない。

ならば、なぜ俺はここにいる?

決まっている。あいつが望んだからだ。いままではそう言い切ることができた。でも……本当におれは望まれているのだろうか。勝手にわいてでてきて、あいつを苦しめているだけじゃないのか?

悩みだしたらきりがない。終わりのない問いは、あまりにも難しすぎて……けれどもそうして、少しずつ核心に迫っていくのだ。俺がもう一つのあいつであるということの、その意味へと。

俺がきづいても、あまり変わりはしなかった。でもあいつが知ったら、きっと壊れてしまう。深いふちを知ればしるほど、そこには暗く重たい闇があるから。

それはたぶん、あまりにも醜い「俺=あいつ」の素顔だ。誰にでもあるはずで、だれにもないふたつの鎖。深淵につながれた、その先端。

俺ですらめまいがした。あいつは俺より弱いんだ、耐えられるはずがない。

周囲が消そうとせずとも「いつか消え去る」ということは、怖いけれども俺の宿命のような気がしていた。でも俺は、まだ消え去ってしまうわけにはいかないんだ。

だけど。

わかっていた。俺は、ほんとうは俺ではないこと。







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